成年後見制度
認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。
● ノーマライゼーション
高齢者や障碍者であっても特別扱いしないで、今までと同じような生活をさせようとする考え方
● 自己決定権の尊重
本人の自己決定を尊重し、現有能力を活用しようという考え方
● 身上配慮義務
本人ん状況を把握し配慮する義務
メリット
● 本人や家族の意思により、信頼できる方を成年後見人、保佐人、補助人に選任することができる。
● 判断能力が減退した方の財産管理、身上監護をすることができる。
● 不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなる。
デメリット
● 企業の取締役などに就けない
● 手続きに時間がかかる
● 判断能力の減退確認が不十分になる可能性がある
● 任意後見監督人の選任申立てを行わない可能性がある。
● 判断能力が減退している状態につけ込んで悪用される可能性がある
● 通常月額3万円程度の金銭負担がかかる
● 年金生活の一人暮らしのおばあちゃんが訪問販売で必要もない高額な商品を買ってしまう。
● 夫に先立たれてしまい一人で過ごす老後が不安・・・夫が残してくれたマンションの経営や、将来 お世話になるかもしれない老人ホームの入所手続を代わりにやってもらいたい。
● 兄が認知症の母と同居しているが、どうやら兄が勝手に母のお金を使っているらしい。
● うちの一人息子は生まれたときから重度の知的障害者で、私たち両親が亡くなった後のことが心配
● 高齢のため体が不自由で要介護認定を受けているが、特に認知症ではない。出歩くのも大変なため 預金の管理等が困難なので代わりにお金の管理をしてくれる人が欲しい。
● 最近、物忘れが激しくアルツハイマーの疑いがあり、一人暮らしのため老後がとても不安だ。
● 寝たきりの祖母からお金の管理を頼まれたため、きちんと祖母のお金の管理をしているにもかかわ らず、叔父や叔母からなにかと疑われてしまう。
● 認知症の母の不動産を売却して老人ホームの入所費用にあてたい。
成年後見制度は,大きく分けると,法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。
法定後見制度
法定後見制度は,「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており,判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。
法定後見制度においては,家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって,本人を保護・支援します。
メリット
● 本人や家族の意思により、信頼できる方を成年後見人、保佐人、補助人に選任することができる。
● 判断能力が減退した方の財産管理、身上監護をすることができる。
● 不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなる。
デメリット
● 選任されるまでに最低でも半年手続き期間が必要なため、迅速性に欠ける。
● 申立人が負担する家庭裁判所に納める費用が高額となるか可能性がある
● 成年後見人が選任されると被後見人(本人)は選挙権を喪失する。
● 成年後見人、保佐人が選任されると被後見人、被保佐人は資格制限を受ける。
任意後見制度
任意後見制度は,本人が十分な判断能力があるうちに,将来,判断能力が不十分な状態になった場合に備えて,あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に,自分の生活,療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。そうすることで,本人の判断能力が低下した後に,任意後見人が,任意後見契約で決めた事務について,家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって,本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。
メリット
● 本人の判断能力が低下する前に後見人が選べる
● 任意後見人の地位が公的に証明される
● 家庭裁判所から任意後見人の仕事が判断できる
デメリット
● 死後の後処理までは任せられない
● 本人に代わって契約はできるが管理はできない
すでに判断能力が低下していて、自分で書契約などが必要なサービスや、身の回りの財産管理が困難な場合に利用します。また、ヘルパーの手配、入院したりした場合、その人のために、取消や(同意権・取消権)、入院契約(代理権)をすることができます。
すでに判断能力が不十分になっているので、任意後見契約(後述)のように契約によって依頼できませんので、法律がそのような役割を担う人を決める仕組みを法定後見制度と言います。法廷後見人制度には「補佐」「補助」「後見」の3つのパターンがあります。
後見の制度 |
対象者 |
判断能力が欠けているのが通常の状態の方 |
申立権者 |
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長 |
同意権 |
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取消権 |
日常生活に関する行為以外の行為 |
代理権 |
財産に関するすべての法律行為 |
資格の制限 |
医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失う |
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により,判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると,家庭裁判所が選任した成年後見人が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人または成年後見人が,本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,取消しの対象になりません。 |
保佐の制度 |
対象者 |
判断能力が著しく不十分な方 |
申立権者 |
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長 |
同意権 |
民法13条1項所定の行為 |
取消権 |
民法13条1項所定の行為 |
代理権 |
申立の範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
資格の制限 |
医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失う |
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により,判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると,お金を借りたり,保証人となったり,不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について,家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。保佐人の同意を得ないでした行為については,本人または保佐人が後から取り消すことができます。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,保佐人の同意は必要なく,取消しの対象にもなりません。また,家庭裁判所の審判によって,保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり,特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます |
補助の制度 |
対象者 |
判断能力が不十分な方 |
申立権者 |
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長 |
同意権 |
申立の範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
取消権 |
申立の範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
代理権 |
申立の範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
資格の制限 |
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軽度の精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により,判断能力の不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると,家庭裁判所の審判によって,特定の法律行為について,家庭裁判所が選任した補助人に同意権・取消権や代理権を与えることができます。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,補助人の同意は必要なく,取消しの対象にもなりません。
補助人に同意権や代理権を与えるためには,自己決定の尊重の観点から,当事者が,同意権や代理権による保護が必要な行為の範囲を特定して,審判の申立てをしなければなりません。この申立ては,補助開始の審判とは別のものです。なお,補助に関するこれらの審判は,本人自らが申し立てるか,本人が同意している必要があります。 |
民法第13条第1項(特定の法律行為) |
● 貸金の元本の返済を受けたり、預貯金の払戻しを受けたりすること。
● 金銭を借り入れたり、保証人になること。
● 不動産をはじめとする重要な財産について、手に入れたり、手放したりすること。
● 民事訴訟で原告となる訴訟行為をすること。
● 贈与すること、和解・仲裁合意をすること。
● 相続の承認・放棄をしたり、遺産分割をすること。
● 贈与・遺贈を拒絶したり、不利な条件がついた贈与や遺贈を受けること。
● 新築・改築・増築や大修繕をすること。
● 一定の期間を超える賃貸借契約をすること。
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(1)家庭裁判所で申立の準備を行う
本人の所属する地域を管轄する家庭裁判所に行き、申し立てを行います。この時、申し立てを行うことができるのは「本人」「配偶者」「四親等内の親族」などに限られています。
申立てる場所 |
本人の住所地の家庭裁判所 |
申立権者 |
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長 |
四親等内の親族 |
親、祖父母、子、孫、ひ孫、兄弟姉妹、甥、姪、叔父、叔母、いとこ、
配偶者の親、配偶者の子、配偶者の兄弟姉妹 |
(2)申立てに必要な書類
● 申立書
● 本人の戸籍謄本
● 本人の住民票
● 本人の登記されていないことの証明書
● 診断書
● 成年後見人候補者の戸籍謄本
● 成年後見人候補者の住民票
※必要書類は、類型によって変わってきますので、家庭裁判所でご確認ください。
(3)申立て費用
申立手数料 |
後見開始の申立
保佐開始の申立
保佐開始+代理権付与
保佐開始+代理権付与+同意権・取消権拡張
補助開始+代理権付与
補助開始+同意権・取消権付与
補助開始+代理権付与+同意権・取消権付与 |
800円
800円
1,600円
2,400円
1,600円
1,600円
2,400円 |
登記手数料 |
収入印紙 2,600円 |
郵便切手 |
3,000〜5,000円
※裁判所によって異なります。申立裁判所でご確認ください |
鑑定料 |
50,000円程
※精神鑑定が必要な場合に、医師に支払う費用です |
(4)家庭裁判所の調査官による事実の調査
申立人、本人、成年後見人(保佐人、補助人)候補者が家庭裁判所に呼ばれて事情を聞かれます。申立て後、裁判所の職員が申立人、後見人候補者、本人から事情をうかがったり、本人の親族に後見人候補者についての意見を照会することがあります。
必要に応じて家事審判官が事情を尋ねる(審問)もありますが、 本人の判断能力について、鑑定を行うことはめったにありません。
※鑑定とは?
本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するための手続。申立て時に提出していただく診断書とは別に、家庭裁判所が医師に鑑定依頼をする形で行われます。
(5)家庭裁判所の審判
申立書に記載した成年後見人(保佐人、補助人)候補者が選任されることが多いですが、場合によっては家庭裁判所の判断によって弁護士や司法書士等が選任されることもあります。
審判に不服申立てがなければ、審判書を受領してから2週間後に確定します。審判に不服がある申立人などは、この2週間の間に不服申立て(即時抗告)の手続をとることができます。
ただし、誰を成年後見人に選任するかという家庭裁判所の判断については不服申立てをすることはできません。
(6)通知と法定後見開始
裁判所から審判書謄本をもらえば東京法務局にその旨が登記されます。この時、登記されている本人・成年後見人などは、登記後の住所変更などにより、登記内容に変更が生じたときは「変更の登記」を申請する必要があります。
また,本人の死亡などにより法定後見、任意後見が終了したときは「終了の登記」を申請してください。この「変更の登記」「終了の登記」の申請は,本人の親族などの利害関係人も行うことができます。
もし支援する人(成年後見人、保佐人、補助人)が、家庭裁判所に対して報酬を受けたい場合、申し立てをした時に報酬が発生します。申し立てをすると家庭裁判所が総合的に判断して支援する人の報酬を決定します。
成年後見人等になれない人
● 未成年者
● 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
● 破産者
● 本人に対して訴訟をしている人、その配偶者、その直系血族
● 行方の知れない者
報酬額
● 家庭裁判所の審判官が全ての要素を勘案してその額を決定します。
● 自動的に支払われることはありません。
家庭裁判所に対し、報酬付与の申立をする必要があります。
● 本人の財産の中から支払われます。
● 原則年1回の支払いで、報酬は後払いです。
管理財産額 |
通常の後見業務を行った場合の後見人報酬額 |
1,000万円以下 |
20,000円 |
1,000万円以上5,000万円未満 |
30,000円〜40,000円 |
5,000万円超 |
50,000円〜60,000円 |
実際に成年後見人として選任された人の仕事は、「本人の意思を尊重し、かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必要な代理行為を行うとともに、本人の財産を適正に管理していくこと。」と規定されています。
本人の生活保護と療養介護
本人の財産や収入を把握し、医療費や税金などの決まった支出を見積など、後見人となった方はまずこの業務をすることになります。その上で、中長期的な見通しに立って、医療看護の計画と収支の予定を立て、必要に応じた本人の介護サービス利用契約、診療契約、施設の入退所契約などの法律行為を行います。
本人の財産管理
成年後見人選任の審判が確定したのち、1か月以内に本人の財産を調査して「財産目録」を家庭裁判所に提出します。これが一番面倒といえば面倒な仕事かもしれません。
その後、本人の財産を他人の財産と混同させたりしないように注意しつつ、本人の財産管理を継続します。適切な管理を行うために、収入や支出について細かく金銭出納帳に記録し、領収書等の資料を保管しておくことが大事です。
これを怠ると、預貯金の流用など財産の管理が不適切であるとして、成年後見人を解任されたり、民事・刑事上の責任を問われかねません。
成年後見人の仕事の終了
本人が病気などから回復して判断能力を取り戻したり、死亡するまでは成年後見人としての責任や仕事が終了することはありません。申立てのきっかけとなった当初の目的を果たしたからといって終わりというものではないのです。
途中で成年後見人を辞任することは可能ですが、それも家庭裁判所の許可が必要となり、それも正当な事由がある場合に限られます。ただし、補助人は代理権が付与された特定の法律行為が完了するなどした場合、代理権や同意権を取り消審判を申し立てるなどして、その仕事を終えることができる場合があります。
成年後見人の辞任を検討している場合は「成年後見人辞任許可の申立」を行ってください。
任意後見制度は、本人が契約などの締結に必要な判断能力をまだ持っているうちに、将来的に自己の判断能力が不十分になったときの為に後見事務の内容と後見する人を、事前の契約によって決めておく制度です。
今は元気だが、将来は認知症になってしまうかも、という不安を感じている方が、将来を見越して契約し、認知症になったと思ったタイミングで家庭裁判所に申し立てをして任意後見監督人の選任をしてもらうといった手順になります。
任意後見には、「即効型」「将来型」「移行型」の3つの型があります。
●即効型
判断能力が低下し始めてすぐに任意後見契約を結び、任意後見開始の手続
きをとり、契約の効力を発生させるタイプです。
●将来型
将来、認知症になるなど判断能力の低下に備え、あらかじめ委任しておき
たいことを決めておく、まさしく任意後見制度の基本タイプです。
●移行型
判断能力の低下前から、例えば身体が不自由など外出が困難な方が、財産
管理・身上監護などをみてもらい、判断能力も低下した場合に任意後見に
移行するタイプです。
(1)公証役場で公正証書を作成
将来の不安や心配事について、どんな支援を受けたいか、本人とその支援を依頼された人が話し合い、任意後見の内容と任意後見の受任者を決めます。支援の内容が決まったら、本人と任意後見人は公証役場に出向いて、その内容について公正証書により正式に契約を交わします。
(2)任意後見契約締結に必要な書類
本人に関するもの |
戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、身分を証明するもの |
任意後見受任者に関するもの |
住民票、印鑑証明書、身分を証明するもの |
その他 |
診断書、財産目録、不動産の登記簿謄本など |
(3)費用
任意後見契約作成の基本手数料 |
11,000円 |
登記嘱託手数料 |
1,400円 |
登記に納付する印紙代 |
2,600円 |
その他、証書代 登記嘱託書郵送用切手代など |
(4)判断能力の低下がみられるようになったら家庭裁判所へ
任意後見制度を利用するために、本人の住所地の家庭裁判所に任意後見監督人を選ぶように申立てをします。その際の書類などは「法定後見人」を選任する際と同じです。
(5)任意後見の開始と任意後見監督人の選任
家庭裁判所は、任意後見の開始と同時に、支援する人を監督する任意後見人監督人を選任します。任意後見監督人は開始後、支援する人を監督し、定期的に支援する人の報告を家庭裁判所に行うことになります。
また、任意後見人となった人は、監督人として誰に頼みたいかを推薦し、任意後見契約書に記載することもできます。
(6)任意後見制度を利用後の報告
1年に1度を目安に、任意後見人は成年後見制度を開始した時点での本人の財産目録と収支状況を家庭裁判所へ報告します。
本人が死亡するなどして、成年後見業務が終了した場合、家庭裁判所へ後見業務が終了した報告書を財産目録とともに提出し、すべての後見業務が終了となります。
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まずは電話・メールでお問い合わせ下さい。 |
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(平日9:00〜18:00)
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平日は24時間以内、休日は48時間以内にお返事いたします。 |